私が「派遣」という働き方を選んだきっかけ
WEB/DTPデザイナーの仕事を、これまで20年以上続けてきましたが、キャリアの約3分の2を「派遣社員」という形で過ごしてきました。
最初は正社員だったのですが、年齢を経るうちに中々、転職が決まらなくなっていったというのが実情です;
年齢以上に、私自身にも問題あったと、今になって思うこともあります。
何せ、当時は髪型などの身だしなみも気を遣わず、志望動機も特になし。
「『金が欲しいから』でいいじゃん」とか本気で思ってました😅
勤めていた会社も、給料が安く、仕事にも行き詰まり、おまけに人間関係もボロボロ。
とにかく「ここから脱出したい!」という思いしかなかったのです;
こうした事も原因にあったでしょう。
転職活動は全く上手くいかない(書類は8~9割通るが、面接でほぼアウト)状況で、だんだんと気持ちも追い詰められていきました。
「とにかく新しい一歩を踏み出したい!」
「人柄よりも、技術を見てほしい!」(今考えると、それも何だなとは思いますが💦)
そんな折に、派遣社員という働き方を選ぶことになりました。
「派遣デザイナー」を選んだ当初は、正直不安の方が大きかったです。
「簡単に契約を切られてしまうのではないか」「登録しても全く仕事がなかったらどうしよう」…。
正社員にこだわるのを止め、派遣社員の道を「えいやっ」という思いで踏み出しましたが、内心不安ばかりで飛び出したデザイナー人生。
でも今では、非常に大正解だと感じています。
その後、派遣を通じて多くの実績とスキルを得ることができました。
あの時、派遣で働くことを決心できていなかったら、ずっとキャリアは停滞していたかもしれない。
今回は、派遣のWEBデザイナーとして長年働いてきた私が、その利点と欠点を紹介していこうと思います。
派遣デザイナーのメリット
残業が少ない
まずワークライフバランスが良い、というのが挙げられます。
過度な残業は、ほとんどないと言って良いでしょう。
派遣デザイナーの時給は高く、残業代はさらに1.25倍。人件費などを気にする就業先であれば、定時で帰れる(帰らされる)ケースも多いです。
就業時間内はしっかり勤務して定時でスパッと退社。あとは自分の時間に充てるという生活も可能。
正社員時代に過重労働で体を壊してしまい、長い時間働くのが困難な方などもいるかと思います。
こうした人たちにも、ワークライフバランスの良さは魅力なるでしょう。
給与が高い
専門職である派遣デザイナーの給与は、事務職などの派遣社員より高い傾向にあります。
残業代に関しても、正社員のような「みなし残業代」などではなく、しっかり時間分支払われます。
ボーナスが出ない、という点はありますが、企業によっては正社員より高い給与をもらっているなんて事もありますし、長時間労働を強いられる傾向の強い正社員よりも、高い時間単価になる事も十分にあり得ます。
時給に関しては、高いスキルがあれば、さらに高給を狙えます。
「デザインもコーディングも、すごくレベルが高い」ともなれば、時給2,000円以上だって、軽く狙えます。
と、ここまで書いてきましたが、さすがに「年収500万円以上」となってくると、さすがに狭き門です😅
前項に記したように、派遣社員の働き方は自由な時間を確保しやすいです。
副業をしてみたり、投資をしてみたりなどで、収入を補うのも手かもしれません。
副業がしやすい
派遣社員の就業規則は、正社員と比べ緩めになっているものです。
副業を認めている派遣会社も存在しますし、「申請すればOK」という会社もあります(審査で許可されないケースもあるので注意が必要)。
私の感覚では、大手の派遣会社より、小規模の派遣会社の方が副業を認めている場合が多いです。
副業に重点を置くのであれば、クリエイター専門の派遣会社から就業すると良いでしょう。
社会保険が完備
正社員と同様に、派遣社員にも各種社会保険が完備されています。
ただし、入社したタイミングから加入できる派遣会社は少ないです。
試用期間(大体1か月)を終えたタイミングからになるケースが大半でしょうか。
厚生年金を会社が折半で払ってくれるというのは結構助かりますし、国民健康保険は非常に高いです💦
フリーランスで相当稼いでいる、というようであれば話は別ですが、そこそこの稼ぎであれば、業務委託などより派遣社員の方が良い待遇になるのでは、というのが私の感触です。
場数を踏める
正社員で働いていますと、一社で勤める期間が長くなる傾向があります。
「一つの場所で長く働く」というのも一つの才能かもしれませんが、デザイナーであれば、「様々な業種のデザインに携わりたい」と思うのも自然ではあるでしょう。
派遣社員の場合、3か月や6か月(1年とかもあるらしい)という契約のスパンがあり、労働者の方でも契約を更新するか否かの選択をすることができます。
「これまでと違う、他の制作物をやってみたい」や「もっと最新の技術に触れてみたい」などという想いを持っているのであれば、そうした企業に勤めるチャンスも得やすいでしょう。
「ブラック」の時に脱出しやすい
これも私の経験ですが、制作の仕事はブラックな企業が多い😅
「サービス残業を要求された」「上長が怒鳴り散らしてくる」「事前に聞いてた業務内容と違う」etc…。
こうした会社に当たってしまっても、正社員だと中々抜け出せないのが現状。。。
でも、派遣社員ならば契約の切れ目、あるいは試用期間終了のタイミングで退職できます。
ただ、中には「それさえ待てない!」「早く辞めたい!」なんて就業先もあるかもしれません。
派遣社員には仕事を紹介してくれた営業さん(カッコよく言えば「エージェント」)がいます。
契約が基本なので、なかなか期間途中に辞めるのは難しいのが通常ですが、営業さんには職場の状況を報告したり相談したりすることもできます。
愚痴でも良いので、営業さんを頼ってみましょう。
時に、あまり事を表沙汰にしたくないのか、就業先の肩を持つ営業さんもいますが、その時は更にその先のコーディネーターを当たってみましょう。
派遣デザイナーのデメリット
仕事が単純な職場が多い
派遣デザイナーとして入社した場合、単純な業務ばかりがアサインされる職場が多いのは否めません。
「余計なことはしなくていい」というような雰囲気で、ただひたすら画像調整とか、HTMLタグのコピペ作業…、なんてこともあり得ます💦
さらに言えば、責任がある業務や機密事項の多い業務などは、どうしても正社員が担うことになるものです。
私自身、面談で「素晴らしいご経歴ですね~!」「こんな事もやってらっしゃったんですか~!」なんて言われて採用されたものの、バナーの画像差し替えや単純なHTML編集ばかりで、ストレスが相当たまった経験があります。。。
しかしながら、決して上記のような職場だけではありません。
MTGなどの参加も要求され、自分で判断して動く事を要求される就業先も存在します。
ただ、「言われた事だけやればいい」のか「主体的に働きたい」のかは、個人の働き方に対する考え方の問題なので、前者を希望する方もいるでしょう。
どんな職場風土なのかは、実際入社してみないとわからないというのも正直な所です。
低い身分として扱われる
正社員と比較して、派遣社員が一段低い身分の人間として扱われてしまう職場もあります。
言葉遣いが横柄なことがあったり、何だか軽く見られたりするケースです。
「正社員になれなかった人たち」といった認識で、派遣社員側を見ているのでしょう。
どうもマウントを取ってくる会社があります。
実感としては、正社員毎に対応が違うというより、その会社全体あるいはその部署全体で、そうした風潮を持っているように感じています。
「他の人も馬鹿にしているし、自分もそうしておこう」といった、連鎖反応的な意識の広がりでしょうか;
人によっては、別段気にならない場合もあるでしょうが、私はすごく気になりましたw
ちなみに私は、
「正社員 > フリーランス > 派遣社員」という、謎のヒエラルキーのあった会社にいたことがあります。
フリーランスは専門家として一目置いているような印象でしたが、派遣社員への態度は酷かったです(フリーランスと、仕事内容は特に差はなし)。
「お前らなんぞ、上司に持った覚えはねーよ」と折を見て転職しました(彼らの前で口に出していったのではないですよ😅)
同じ職場が3年以上継続できないことがある
どんなに気に入った会社であっても、派遣先の現場で「まだいてほしい」と頼まれても、原則3年で雇用契約は終了してしまいます。
同じ派遣先で3年以上働く場合には以下の方法がありますが、派遣先及び派遣元(派遣会社)の事情に大きく左右されてしまいます。
- 派遣先で正社員として雇用される
- 派遣元で無期雇用に転換される(派遣会社の正社員になる)
無期雇用への転換制度は、全ての派遣会社で導入している訳ではありません。
受け入れていたとしても、条件が様々であったり、選考がある場合もありますので、「派遣でも長く働きたい」という方は、情報収集が肝要です。
また、別の派遣会社で3年は働いた方を対象に、自社で無期雇用社員として受け入れる派遣会社も存在します。
「せっかく良い会社で働けているのに、3年で辞めなきゃいけないのはイヤだ!」
そうした場合でも、「制度だから」と簡単に諦めず、受け入れOKな派遣会社を探すのも一手です。
雇用の不安定性
派遣デザイナーが雇用契約を切られてしまうのは、単にスキルや職務態度だけではありません。
就業先企業の、業績悪化や部門統合による人員削減も大きな要因になります。
いくら制作スキルが高くても、関係なし。
もう、これに関しては「災難」と思う他ないです。
でもこの場合、そのデザイナーの実力とは関係のない話です。
「レベルが低いから契約終了です」という事ではないので、自分に落ち度はないと気持ちを切り替え、次の活躍の場を探しましょう。
収入の確保、あるいは実績作りに
派遣デザイナーとして長年勤めてきた私が思い当たる、派遣デザイナーのメリット及びデメリットを見てきました。
キャリアのあるデザイナーの方で、「もう正社員はいいかな」と思っている方には、選択肢の一つとなる働き方であると感じています。
派遣社員として働いて生活の費用を稼ぐ。
あとは趣味、副業、勉強など、自分の使いたい時間を確保する。
もしかしたら私のように、あらたな可能性に踏み出すきっかけになるかもしれません。
一方、実務経験のないデザイナーの方にも、派遣の働き方はチャンスを与えてくれるでしょう。
画像加工や簡単なHTML編集などの比較的敷居の低い案件も、時給は低いですが仕事があるのも事実です。
とにかく現場に入り込むチャンスとして、派遣デザイナーからスタートするというのも一つの方法です。
クリエイティブ現場の空気に触れるというのは、とても大切なことです。
これは、正社員でも派遣社員でも同じです。
技術も大切ですが、それ以上にその場の空気に触れることが、クリエイターとしてのマインドを育ててくれます。
もし貴方がデザイナーとして行き詰っていたら、派遣デザイナーという働き方でまた違う何かが見えてくるかもしれません。
siesta